

【CREOLE】 米澤里絵さん 伝統的な手仕事を、日常生活の中に。
2025年10月10日公開
手仕事のあたたかみが感じられる製品を揃えた「CREOLE(クレオール)」。ラオスの職人さんたちが作った数々の製品は、日々の生活に馴染む温もりのあるアイテムです。そんな唯一無二のものづくりを続ける、CREOLE代表・米澤里絵さんにお話を伺いました。
ラオスの風土と文化から生まれた製品たち
ーラオスの伝統的な技法を活かしたものづくりについて、詳しく教えてください。
ラオスでは、ナイロンネットが簡単に手に入る時代になる前まで、漁に使う漁網を編むために、葛の繊維を紡いだ糸を使用していました。今では、その編みたての技術を応用して、バッグなどの服飾雑貨を作っています。
他にも、村や民族によって、様々なものを作っています。 綿花を育てている村には、オリジナルの柄のクロスを織ってもらっています。刺繍が得意なグループには、コースター等の布小物。また別の村には、箒や籠も製作を依頼しています。
クレオールの製品はほとんどがラオス北部のウドムサイという街の近郊の村々で作られており、私が考えたデザインをもとに、現地の職人たちが手作業で仕上げています。素材や染料もすべて村の近くで採れるもので、染料にはソメモノイモ、ターメリック、藍、泥などを使用しています。草木染めに使う染料は、採れる地域や季節によって、染め上がりに色の違いが出ます。 ウドムサイで採れる染料は、日本では馴染みのない鮮やかな色も多いため、それらの色を採用して、商品展開を考えています。
― デザインを行う上で大切にしていることは何でしょうか?
大きく分けて、2つあります。ひとつは、デザイン性を前面に出すのではなく、葛の持つツヤや手触りを大切にし、素材本来の魅力が引き立たせるように心がけています。色についても、現地の伝統的な技法によって生まれる色を尊重しています。職人に無理を強いて色をコントロール(複数の染料をかけ合わせたような、複雑な色を染める、等)はしません。もうひとつは、私達の普段の暮らしに自然と馴染むデザインにすることです。無理に装飾を加えず、シンプルな形や柄にすることで、誰が手に取っても毎日が気持ちよく過ごせるものを作ることを心掛けています。生活に溶け込むアイテムとして、男女問わず使っていただきたいと思っています。

「人間の本来の暮らし」が残っていたラオス
ーブランド立ち上げの経緯を教えてください。
もともと機織りや糸紡ぎに興味があり、イギリスに留学してテキスタイルを学びました。帰国後は日本の企業に就職し、デザイナーとして働いていました。そんな中、以前旅行で訪れたラオスに再び渡航し、ラオス国内各地からハンドクラフト製品が出品される展示会に足を運びました。パートナーとなる生産者を探すためでもありました。ラオスでなら日常的に使えるアイテムを適正な価格で商品をできると思ったからです。デザインから製作まで一人で行うのは膨大な時間がかかり、まとまった量を販売することも難しくなります。現地のパートナーや職人と協業することで、新たな可能性が広がると考えました。仕事に戻った後も、ずっと抱いていた「手仕事に携わりたい」という思いが消えず、2013年に自分のブランドを立ち上げました。それが、クレオールです。はじめの頃は一枚ずつ柄の違うオリジナルの柄の、草木染めの手織りストールをオーダーしていました。

ーシルクストールから始められたのですね。その後、どのようにして葛の編み製品にたどり着いたのですか?
ブランドをスタートして、数年もしない内に、ラオス産のシルクの入手が難しくなってしまったこと、また、平行して続けていた企業での仕事が忙しくなってしまったことを理由にブランドを休止することにしました。数年経ち、素材を葛や綿に変えて、バッグや生活雑貨を扱うブランドとして、活動を再開しました。それが今に続いています。
ー手仕事を事業として成り立たせていくための要素が揃っていたのですね。そんなクレオールの製品を、どのようなお客様に届けたいと考えていますか?
価値観も多様化し、自分たちが使うものを価格で選ぶ人もいれば、こだわって選ぶ人もいます。ものを選ぶ基準は人それぞれですが、私は「日常的に使うものだからこそ、こだわりを持って選びたい」と思う方に届けたいと考えています。いつまでも「大量生産・大量消費」の時代が続くとは限りません。自分で立ち上げたブランドだからこそ、大企業が売り出すものとは違う、ブランド独自の価値を届けていきたいと思います。

ーそう考えるようになったきっかけはあったのでしょうか?
私自身、会社員時代は大手企業向けのデザインを手がけていました。数十万枚規模の大量生産の現場では、ほんのわずかな色ムラがあればそれだけで不良品として扱われ、廃棄されます。そうした環境にいるうちに、「これでいいのだろうか?」と疑問を抱くようになりました。
私が訪れた2007年頃のラオスは、まだ首都のヴィエンチャンでさえ、街中は夜になると暗く、整備されていないメコン川のほとりでは、簡単な屋台が立ち並び、旅行者は夕日を眺めながら寝そべっていました。村を歩けば、鶏や豚など、自家用の家畜を飼っているのが普通で、織物をする人や手仕事に励む人たちもたくさんいました。そんな光景の一つ一つが、日本で当たり前だと思っていた生活とはまったく異なり、とても新鮮だったんです。蛇口をひねれば水が出て、ガスも自由に使える日本で暮らしていた私にとって、ラオスの暮らしは「本来の人間の生活とは何か」を改めて考えさせてくれるものでした。


続けていくことで、伝統を守っていく
ーそんなラオスも今、大きく変わりつつあると伺います。
海外資本により、ここ数年で経済発展がより加速化し、若者たちは都市や海外へ出稼ぎに行くようになりました。その結果、伝統的なものづくりを続ける人がどんどん減っています。もちろん、工場ができることで雇用が生まれ、生活が安定するのは良いことですが、長年受け継がれてきた手仕事の技術が失われつつあるのも事実です。お金をより稼ぐことがいいのか、もしくは消費の波に乗るのがいいのか、何が正解なのかは考え方によってその答えは人によって違います。自然とともに手仕事をしながら暮らし、自分で紡いだ糸で製品を作る。私は、そんな彼らの「日常」がとても豊かで美しいものだと思っています。ただし、その「手仕事」がいつまでも続いてほしい、と思う半面、いつまでも続くとは考えていません。これまで、どの国も辿ってきた「手仕事」の道を振り返れば、ラオスも同じだと考えています。それでも、少しでも長くラオスの手仕事に関わっていくのが今の目標です。
―2024年10月に開催された「東京スピニングパーティー」に参加してみて、いかがでしたか?
以前から「作ること」が好きな仲間内から、売る方も買う方もこだわりの強い人が集まるイベントだ、と聞いていましたが、今回が初めての出店となりました。実際に参加してみて特に印象的だったのは、手芸の世界を“究極”まで追求する方々の熱量です。今の時代、糸はどこでも手に入りますが、スピパのようなイベントに足を運んでこだわり抜いた糸を選ぶ人は、まさに“究極派”の方々。手仕事を極める方々が日本にもこんなに多くいることを実感し、とても心強く感じました。

― 今後の目標や、挑戦したいことを教えてください。
まずは、クレオールを続けていくことが一番の目標です。そのために、しっかりと「売れる」ブランドに育てていかなくては、と思っています。私は、ボランティア精神をもってラオスの村人達のためにこのブランドを立ち上げたわけではありません。支えてくれる職人たちがいることでブランドが成り立ち、ブランドがあることで職人たちが仕事を続けられる。そんな循環の輪を、これからも大切に紡いでいきたいと思っています。

手仕事の“オトモ”
旅・人と話すこと
旅行が大好きなので、今は年に数回、飛行機に乗ることが息抜きになっています。展示会などのイベントでお客さんと話すことも、楽しみの1つ。普段は一人で作業をしていて、家にこもりがちの生活を送っているので、イベントは良い発散の場になっています。雑談の中から学ぶことも多く、さまざまな人と話すことで新しい視点を得られるのも面白いです。
(◇取材・文:辺見美咲 ◇デザイン・編集:スピパジャーナル編集部)
〈米澤里絵さん プロフィール〉

英国・ノッティンガム・トレント大学(The Nottingham Trent University)でテキスタイルを専攻し、2001年に学士号(BA)を取得。帰国後は、商社にてインテリアテキスタイルやファッションテキスタイルのデザイナー、生活雑貨の企画・営業などに従事。
2013年に自身のブランド「CREOLE(クレオール)」を立ち上げ、ラオスやタイの手仕事の職人たちと共に、生活雑貨を中心としたものづくりを展開。2018年より活動を本格的に再開し、現在も精力的に活動中。
ブランド運営と並行して、テキスタイルに関する企画の仕事も手がけている。
・CREOLE
https://creole-creole.com/
・インスタグラム
@creole.planning
